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特集
2015.05.07

インタビュー/ティンマシンモーターサイクル代表・高橋勝也さん(後編)

インタビュー/ティンマシンモーターサイクル代表・高橋勝也さん(後編)

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ティンマシンモーターサイクル高橋さんのインタビュー、後編はいよいよショップをオープンするまで。そしてカフェレーサー、SRへのコダワリなどを聞いた。
取材協力:ティンマシンモーターサイクル
前編はコチラ

 
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ひょんなことから始まったティンマシンモーターサイクル

編集部(以下、編)ーもともと、高橋さんはどういった仕事をされていたんですか?ー
高橋さん(以下、T)「アパレルのサラーリマンです。その時はまったくバイク関係じゃなくて……。もともとは大阪の会社に勤めていたんですけど、転勤で東京に行ったんです。24~5歳くらいの時でした。東京には2年くらいしかいなかったですけど」

編 ーアパレルの会社に勤めていて、どうしてバイク屋さんに転職するんですか?ー
T「約2年間、東京で勤めていたのですが、会社からまた『大阪に戻ってこい』って言われて大阪に帰った。当時、28歳くらい。で、大阪へ帰るには帰りましたけど、そのときにはもう会社を辞めようと決心していましたね……。僕が東京に行ったのは会社の命令ですけど、その時たまたま知り合った裏原宿でモーターサイクルにまつわるウエアを中心に『つねにカッコイイってこういうことじゃないの!?』って発信し続けてる人に出会い、その人がいつも『かっちゃん、今度走りに行くからおいでよっ!』って、東京のことを右も左もわからない僕を連れまわしてくれて、たくさん友だちを紹介してくれたんです。歳は僕より少し上の先輩みたいな方で、すごいパワーというか、馬力がある人で行動力があって、そのときに出会った友だちがみんなすごく個性的で、自分の意思で『一旗あげてやろう!』という気持ちで東京に来ている人たちばかり。みんな夢を持っていてガムシャラで、それぞれ頑張っているわけです。僕はすごく友だちに恵まれてるんですよ。自分が高校生のとき、たしかに『SRとかバイク関係のことがやれたらなぁ』とは思ってたんですけど、バイクは一番好きなものだから趣味のままでいようと思い、二番目に好きなアパレルを仕事にしようと、わりと簡単な気持ちで決めてそれまでやっていた。だけど結局、会社に入り薄々分かってたけど、やっぱり自分の思ってるような仕事じゃなかった。会社組織や得意先関係の中で自分の思うモノをカタチにするってすごく大変なことですね。そんなことを思いながら、彼ら……東京に来てギラギラしてキラキラしてとにかく夢叶えようともがいている彼ら……を見てたら、やっぱり『自分の人生、一番好きなものを仕事をやらないと後悔する。あの時しておけば良かった……って嫌だ!』って思った。だけど本当にやるんやったら修行もせなあかんし、30歳を越えてイチから転職なんて多分無理。なんとかギリギリ35歳でだったら頑張れば独立出来るか? なんてことも考えたので、やるなら今しかないと思って、28歳のときにバイク屋に転職しました。今思えば、東京に行ってなかったらバイク屋はしてなかったと思います。だから東京で出会った友だちがあって、今の僕があるんだと思いますね」

編 ーその就職したバイク屋さんっていうのは大阪にあるショップさんなんですか?ー
T「いや、地元和歌山のショップですね。個人経営の、リッターバイクを中心に扱う結構趣味性の高いバイク屋さん。僕がバイクに乗り始めたときに知り合ったお店です。そこで働いて、2004年に自分の店を出しました」

編 ーじゃあショップの社長とは長い付き合いだったんですね。結局、どれくらいの期間働いたんですか?ー
T「そうですね、最初は客として行ってたんですけど、その頃からほぼ、『場所は貸してあげるから、自分で出来るところはやってみなさい』って感じでした。ちゃんと社員にしてもらって働いたのは2~3年ですね」

編 ー先ほど、高橋さんの中では35歳で独り立ちしたいビジョンがあったとお聞きしました。だけど、それより少し早い時期にお店を開店することになったのには、なにかキッカケがあったんですか?ー
T「勤めてたバイク屋の社長のお父さんが自動車整備工場を経営していたんですが、そのお父さんが亡くなったんですよ。それで急に社長がその自動車整備工場を継ぐという話になって、そうしたら社長から『もうお前はここで(お店を)はじめろよ』って言われまして(苦笑)。そのまんま僕が居抜きのようなカタチで、自分で店をはじめることになりました」

編 ーお店の名前の由来はどこから?ー
T「デビットボウイのバンド名からです。『ティンマシーン』って曲もあるんですよ。急な話で、1週間くらいで名前も決めなアカンということで、焦りながらも色々考えて名付けました(笑)」

編 ー1週間ですか!!それは急ですね(笑)。ー
T「社長もわりと豪快な人でしたからね(笑)。話を戻すと、『ティンマシン』って調べてみたら俗語らしくて、ブリキのオモチャっていう意味もあるらしい。『ティン』だけで調べたら、『うすべったい、うすい』とか、『ブリキ』、『薄い板』なんて意味がある。つまりティンマシンは、『ゼンマイ仕掛けのブリキのオモチャ』っていう意味らしいです。それで、バイクも鉄にまつわることやし、それでティンマシン。カフェレーサーもそうだし、デビットボウイもイギリス人やし、ティンマシンって名前もカッコいいしってことで、『ティンマシンモーターサイクル』でいいんじゃないかなということで決まりましたね」

編 ーそれでティンマシンモーターサイクルはちょうど11年前、2004年にスタートしたということですが、経営は最初から順調だったんですか?ー
T「そうですね。ほぼ居抜きでお店を引き継がせてもらいましたし、そのままお客さんもついてくれている感じでした。最初はSRのお客さんなんていなくて、だけどお店にはドゥカティのお客さんやらSSKの走り屋さんとかが来てくれていたので、それで食いつないでたというか」

編 ーということは、最初からSRオンリーというワケではなかった?ー
T「「自分のお店として看板を掲げたときからは出来る限りシングル、SRオンリーの雰囲気は出していました。『やるからにはSR!』と思っていたので。それに姑息な手段ですけど、独立をする前から営業活動はやっていたんです(笑)。バイクで集まってるところに行っては、SRに乗ってる子に片っ端から声をかけて友だちになって……。そうして、ちょっとずつSRのお客さんを増やしていった感じですね」

編 ー「バイク屋さんをやるからにはSRショップ」というのは、28歳のとき、アパレルの仕事をやめてバイク屋に就職した時から考えていたことですか?ー
T「そうですね。SRは20歳の時から乗ってるし、そのSRでなんとか飯を食っていけたらなと思っていました。当時は根拠もない自信があったというか。『俺が作ったら、絶対に誰よりもかっこええSRを作れる』と思ってましたから(笑)」

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編 ーそんな高橋さんが貫いているこだわりや、お店のコンセプト、またはテーマなどを教えて下さい!ー
T「シンプルですが、『カッコ良さ』ですね」

編 ーひとくちに「カッコ良さ」といっても、人それぞれのセンスがあって、高橋さんの思うカッコ良さ、そしてお客さんの思うカッコ良さ……そのバランス取りって、じつはとても難しいことだと思うのですが、その点の調整はどうされているんですか?ー
T「例えば『クァンタムのリアサスペンションがスゴく性能が良いらしい』という話を聞いて、実際に実物を見たら見た目もカッコイイ。だけどカスタムのイメージと外観が合致しなければ装着しない。たとえ性能がスポイルされても、別のリアサスペンションの方が全体的なバランスが高くなるなら、僕はそっちを選びます。なので、絶対性能主義ではない。もちろん走るのに不具合が出るものはダメですけど……たとえば性能的に65点であっても、カスタムイメージに沿うなら65点を選びます。逆のことを言うと、パーツ単体で100点でも車体に装着すると65点になっちゃうこともあると思います。もちろん及第点でない物は選びませんが、スタイルとかバランスとか、お客さんの雰囲気に合ってるかどうか。性能も大事なんですけど、重視するのはオーナーとバイクのトータルバランス。こういう音楽が好きで、こういうファッションをしていて、こんな生活をしていて……という、ライフスタイルのアイテムの1つとして、SRをカタチにしたいなと思っています」

編 ーそういったコダワリを持つなかで、ティンマシンさんが製作するSRは特にカフェレーサーが多いと思うのですが、理由があるのですか?ー
T「単純に、僕がカフェレーサーのスタイルが好きなんです、カタチとか(笑)」

編 ーお客さんにオススメしている? だけど、実際にはチョッパーも作ってますよね?ー
T「確かにカフェレーサーを推してはいますね。お客さんに『どんなカスタムがいいですかね?』って聞かれたら、僕は絶対にカフェレーサー寄りになってしまうから、『僕はこれが好きやけど』と言いつつ、決してお客さんに強制するわけでもなく、『何でも言ってください』とは言うてます。以前、SRをチョッパーにしているお客さんが来て、『ここってカフェレーサーしかやってくれないんですか?』って聞かれたんですが『そんなことないです!なんでもしますよ~!』って返したこともありましたね(笑)。ただチョッパーに対して、そこまで詳しくはないから、『教えて』とは言います。もちろん僕も調べますけどね。カスタムは自由だけど文化とか今の流行とかも分かってないとカッコイイの作れないですもんね! どんなスタイルやジャンルでも、出来上がった車両に説得力のあるカッコ良さが好きです。だけどやっぱり僕は、カフェレーサーの低くてアグレッシブなスタイルが好きなんでしょうね。かといってハーレーとかがが嫌いというわけでもない。あれはあれで好きなんですよ。実際に僕もハーレーも作って乗ってましたし。チョッパーもパフォーマンス系も、トラッカー、SSだって、やっぱり気にはなるんですよね。だから本当はいろんなカスタムをやりたいんですよ。実際にいろいろやってますしね(笑)」

編 ーカフェレーサーに限らず、カスタムが好きだという高橋さんから見た、ノーマルSRの印象を教えて下さい。ー
T「スタンダード! オーソドックス! 良いバイクだと思いますよ。若い人、バイク初心者の方からダンディズムな方まで守備範囲が広いバイク! 今、たとえば僕がノーマルのSRを持っていたとしたら、そのまんま乗ってると思います。……うーん、いや、でもやっぱいじりたくなるんかなぁ(笑)」

編 ーやっぱり高橋さんの中ではカスタムしてこそSRという感じなんですかね?ー
T「性格的に、イジらずにはいられないんです(笑)。それはSRに限らず、何でも自分色にしたいというか。最近は『ノーマルっぽいSRがカッコイイ』みたいな空気があるでしょ? それはそれで良いと思うんです。実際カッコ良いし。ノーマルの良さであったり、『ダサカッコ良さ』とか、そんなのも再確認できましたからね。ただ、それはある程度カスタムしてきた人間がいきつくところというか。すべてをやりきった後、カスタムがなんかしんどくなった時に、『あっ、ノーマルってカッコイイな』って感じる領域だと思うんです。ただ、はじめからイジリもしないのに『ノーマルやっぱいいっすよね!』っていうのは、個人的にはなんか寂しいですね。キャブ替えただけでガーンって浮き上がる感じとか知らんやろ? って(笑)。SRに2~3年乗った人が、『僕はSRを乗り込んで、もう分かりましたからSRは卒業です』って言って、ハーレーとかに乗り出す人とか見ちゃうと、お客さんには直接言わないですけど心の中では『すげー!キミはSRのこと2~3年で分かっちゃったの?』って思います(笑)。いろんなバイクに乗ることは良いことだと思うけど、せめて僕の前で『SR卒業』なんて言わないでほしいですよね。『 21年乗ってんねん、俺!』って思っちゃいますんで(笑)。しかも21年も乗って、まだまだ分からへんところはいっぱいある……そんなバイクなんですけどね、SRって」

編 ー2015年で11年目に突入されましたが、チャレンジしたいことはありますか?ー
T「僕の作ったカスタムって、気持ち入れ込みすぎてカッチリしてるというか、最初は乗る為にカスタムしてるに、カッコ良くなるにつれて、気合いを入れないと乗れなさそうな感じになっちゃったりで、それはもうメチャクチャかっこいいんだけど、もうちょっと力の抜けた、土臭いというか、スニーカーにネルシャツでちょっと乗るかなっていう雰囲気を持ったかっこよさのカフェレーサーを作りたいですね。やっぱりカフェになるんですけどね(笑)。だけどカフェレーサーってカッコイイんですけど、実際乗るのはしんどいんですよ。遠くまでは走れないし、見た目も気合いを入れないとアカンというか……。SRチョッパーに乗ってる子が羨ましいですもん。すごく自然体で楽チンな感じ、ラフさユルさがカッコイイですからね。ただ、僕はカフェレーサーにはこだわりたい。そこをこだわらなくなると、ティンマシンじゃなくなる気がします。チョッパーとかはほかの店でメインでやられているところがたくさんあるので、ティンマシンはティンマシンらしさを残したままで、なんとかできないかな、とは思っています」

編 ー最後に、読者やティンマシンさんのお客さんに向けて一言ください!ー
T「バイクだけ見たら、『こんな厳ついバイクを作っているティンマシンってどんな店なん? 偏屈な人間?』って思われるかもしれないですけど、店主はわりと周りに影響を受けやすく、なんにでも興味を持ちたがるユルい感じの人間です、決して『カフェしか作らん!』とか『黒しか作らん!』という偏屈な人間ではありません(笑)。だからなんでも言ってください。ガンガンやりますよ!」

 

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ティンマシンモーターサイクル
高橋勝也さん
 

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