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2018.05.02

ESSAY…井上ボーリング 井上壯太郎/「バイクの魅力について」

ESSAY…井上ボーリング 井上壯太郎/「バイクの魅力について」

バイクは愉しい。バイクは素敵だ。バイクは美しい。間違いないですよね。
バイクやエンジンに関わる仕事を会社として65年もやってきて「いまさらなにを」という感じもありますけど、でも時にはもう一度確かめてみることも必要なんじゃないか、と思うんです。
自分が「バイクが愉しい、素晴らしい!」と思う根本の理由は何なのか。

 

昔は僕たちの身の回りにも金属でできたものって、もっとたくさんあったと思います。それがいつしか多くのものがプラスティックなどの樹脂製品に置き換われていって、いつの間にか

身の回りのものに金属がなくなっていき、特に機械と言われるようなものがほとんどなくなってしまいました。カメラなんかも、もとは全てレンズと金属部品でできた機械でしたけど、今はほとんどプラスティックと電子部品のガジェットですよね。

僕らは機能を持った機械を必要としただけではなく、その佇まいを愛してもいたと思うんです。乗って愉しい、という以外にオートバイにはこのメタル感というか、金属製の機械が持っている冷たくて(時には熱くて)硬い触感のような魅力っていうのがあると思うんです。

柔らかい人間などの生き物にはとても出せないような暴力的なほどの強さとか硬さを象徴しているもの。そういうものを内包した美しいものを所有したい、とか身近に置いてみたいっていう欲求が人間にはあるのではないでしょうか。おそらく美しい時計とかカメラを所有したいというのにも近いものがあるのでしょう。あるいは女性が宝石を愛するのとも共通しているのかもしれません。

もともとはクルマにもそういう魅力があったのだろうと思いますけれども、クルマの場合にはちょっと今は実用性とか安全性とか余計なものがつきすぎた上に、肝心のエンジンなどが隠されてしまって、ボンネットを開けても手が届かないようになってしまったので、そういう意味での魅力は薄れてきてしまっているような気がします。だからかえってクラシック・ヴィンテージのクルマの魅力が際立っている。

一方バイクはいまのところ、変わらずにそういう魅力を湛えつづけているように思うんです。カウルに包まれているものもあるとはいえ、それでもエンジンが露出されているものも多いし、なんといっても人間の肉体との距離がこれほど近いところに本格的な機械が存在するものというのは他にないですよね。なにしろエンジンにまたがってそのまま走って行っちゃうようなもんですからね、バイクは。

だから僕はカウルのついたバイクって好きじゃないんです。高速を長距離を走るのにはあったほうが楽なんでしょうけれども、バイクに「楽」を求めちゃ意味ないですよね? 楽に走るんだったら絶対クルマには勝てないでしょ。でもそれとは違うものをバイクに求めるのなら、クルマなんかでは絶対得られない魅力にバイクは溢れているんですから。

その魅力とは「移動の実感」です。

クルマみたいに楽になればなるほど、移動の実感は薄れてしまいます。風にも当たらず空調が効いて世界から隔絶された箱の中にいて、自動ブレーキやら車線維持装置に守られてナビに従って走っていったのでは、そのうち自分が走っていることさえメーターを見なければわからないっていうようなことになっちゃうんじゃないでしょうか。それってクルマである必要ももうほとんどないですよね。個人用の交通システム。電車に乗るのと何が違うんでしょう。金属でできた機械に触れる魅力などは微塵も縁のないものになってしまいそうです。

金属製の機械というのは乗り物だけにかぎらなくてもいいわけです。ただ、化学工場などの設備なんかの機械だと、どちらかというと「容器」のような感じがしてしまうし、人からの距離が遠すぎます。手に触れられる機械でも油圧プレスでは、ちょっと「機械感」が足りない気がしませんか?シンプル過ぎるというか。

(その点、僕らが得意な「工作機械」=旋盤やフライス盤なんていうのも実はなかなかイイんです。その点僕ら内燃機屋は幸せな仕事をしていますが、その話を始めると長くなりすぎるので置いておきます)

そこへ行くと「エンジン」ってやつはやっぱり凄いと思うんですよ。燃料を入れるとそこでパワーが生まれちゃう機械なんですからね! どんな複雑系の機械時計より精度も複雑さも上のような気がしますしね。ほんとうに金属が金属として最高に機能するモノがエンジン=内燃機関じゃないかと思うわけです。

バイクの魅力ってここにもあるんじゃないでしょうか。最高の機械である内燃機関を最も身近に感じることができ、同時に動物である人間が本来持っている移動能力を飛躍的に拡大してくれる機械。

力がある機械。美しい機械。その機械とひとつになって走り抜ける快感。人間の五感を拡張し刺激してくれるこんなアートのようなモノって他にありますか? ありませんよね。

だから、僕はバイクの未来を不安に思ったことはありません。

バイクは人間にとってこれからも欠くことができない存在であり続けるだろうし、バイクが多くの人から愛されなくなるなんていうことは想像もできません。実際に日本でバイクの保有数(新車の製造数ではない)は右肩あがりで増え続けているという事実をみなさんご存知でしょうか。あのバイクブームの頃より今の方が、実はよっぽどバイクは静かにブームであり続けているんですよね。

 

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協力:(株)井上ボーリング

著者プロフィール

(株)井上ボーリング
井上 壯太郎(いのうえ そうたろう)
創業63年、(株)井上ボーリング代表。エンジンのついた乗り物が大好き。仕事もエンジン、遊びもエンジン。トライアル・モトクロス・ロードレース。バイク以外ではボートを使って水上スキーやウェイクボード。現代世界はエンジンでできているのです!

 

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