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2015年07月31日

インタビュー/井上ボーリング代表・井上壯太郎さん(後編)


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多くのSRユーザーから注目される「ICBM(Inoue boring Cylinder Bore finishing Method)」をリリースする井上ボーリング。その代表である井上壯太郎さんに話を聞くインタビュー企画もいよいよ後編!! 今回は「ICBM」の特徴、さらにSRに「ICBM」を投入することの意義などについて聞いてみた。
取材協力:井上ボーリング

前編はコチラ

 
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未来永劫、この先もずっと
愛され続けるSRを作る

編集部 ー今回、新たにICBMとしてSR用スリーブを出されました。それって逆にいえば、純正で物足りない部分があるからともいえると思うのですが。

井上壯太郎さん(以下、井上)「僕は自分でSRを所有して乗っているわけではないので、『ここがダメ』なんてことは全く思わない。
 ただ、ちょっと話が逸れますが、ウチはアルミのメッキシリンダーを開発しました。その経緯として、ハードクロームメッキのピストンリングができた時点で、エンジンが擦り減らなくなってしまったということがある。それを機にボーリング屋の仕事はガクンと減ってしまいました。だけど、そうしたメッキ技術の進歩はオートバイのエンジン技術の中でもものすごく重要なことだということは、当然ながら思っています。
 一方、ピストンリングはそうして進歩しましたが、1970年代に作られたSRは当然ながら鋳鉄スリーブで、いまだにそのまま。長く愛されていることから、すでに相当な距離を走っている車両もたくさんあると思います。そうしたSRをたとえばボーリングして、ヘッドのシートカットをやって、さらにクランクの芯出しをして……それだけでも十分シャキっとしたエンジンになりますが、せっかくそこまでやるときに現代の技術を投入してやれば、ノーマルスペックでもものすごく良いエンジンになって、しかもほとんど擦り減ることはない。大げさではなく永遠に、ずーっと長く乗っていられるエンジンになるんです。
 たとえばお父さんがSRを大好きで、『若い頃乗ってたんだよ』なんて息子さんに譲ってあげて、そのままずっと乗っていけるような……そんな時代が来るといいなと思っています。だけど、そんなときにスリーブが鋳鉄だと擦り減っちゃうんです。だから、スリーブをアルミメッキにしてやれば、本当に硬いのでまず減ることはない。そのうえで放熱性も良くて滑りもいい。さらにいうと、ピストンもスリーブも全部アルミということになると、たとえ温度が変化しても材質が同じだからクリアランスがほとんど変わらないんです。つまり、冷えていても温まっていても、ピストンとスリーブが同じクリアランスで、エンジンがずっとキレイに回り続ける。純正がダメとは思いませんが、アルミメッキスリーブならもっと高い耐久性を発揮して、未来永劫愛されていくSRを作るということで、SRユーザーのお役に立てるんじゃないかと思っています」

編集部 ー純正は良いエンジンだけど、ICBMにすることで、もっと良いエンジンになると?

井上「そうことです。いま、メッキの技術はかなり完成度の高いものとなっています。僕らがちょうどはじめてHRCの仕事をしたときは、レーサーもまだ鋳鉄スリーブだったんですけど、それがまずアルミメッキスリーブになりました。それから数十年、おそらくいま作られている新型車両の半分以上は……まあ、いろんなメーカーがあるから一概には言えませんが……体感的には半分以上はアルミメッキになっているんじゃないかと思います。
 ただそうすると、いくらウチが『鋳鉄スリーブを上手にボーリングして、プラトーホーニングで仕上げると素晴らしくできますよ』なんて胸を張っていても、シリンダーが全部アルミメッキになってしまえばボーリングなんて要らなくなっちゃう(苦笑)。そういうことを考えると、どうしてもメッキの技術にも対応しなきゃならない。
 そういうわけで、いま、ウチはアルミ製メッキスリーブに取り組んでいるわけなんです』

編集部 ーそれがSR用としてもリリースされている「ICBM」ということになるんですね。

井上「はい、そうです。よく誤解されるんですが、『ICBM』というのは純正の鋳鉄スリーブを取り払って、ウチでアルミ製スリーブを作ってメッキを施す、そしてそれをシリンダーに入れて、さらにホーニングを施して……という一連の技術のことを指します。メッキだけではない。スリーブを製作するところからホーニングまで、全部を含めて仕上げるところまでを『ICBM』と呼ぶのです」

編集部 ーなるほど、商品名ではなく、あくまでも“一連の技術”……「ICBM」のMが「Method=方法」となっているのはそういうことなんですね!
 では、ラインナップというか、適合モデルを教えてください。

井上「いままでやったものというのであれば、たくさん名前を挙げられますが、標準的に取り組もうとしているのはSRとZ1・Z2あたりですね。だけど、それら以外にもRZは随分やっていますし、RZ-Rもやりました。いまは内径φ52~101まで……ちょっと抜けているサイズもありますが、一般的なサイズであれば大丈夫。その間の内径であれば、何でも単品で製作できます。2ストでも4ストでもOKです。ただし基本的にはワンオフ製作なので、やっぱり時間は2〜3ヶ月はいただいています。とくに2ストは時間が掛かりますね」

 
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メッキを施す前のアルミスリーブ。

 
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メッキ加工を施し、SRのシリンダーに合うように余計な部分を落としたスリーブ。

 
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スリーブを純正シリンダーに装着し、さらにホーニングを施した完成品がコチラ。
ICBM加工(アルミメッキスリーブ化):STDサイズ(φ87mm) 75,600円
完成品シリンダー・ピストンキット:STDサイズ(φ87mm)&ワイセコ 113,000円

 
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完成したシリンダーにはシリアルナンバーがつけられる。
希望しない場合はタグとして贈呈される。

 
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左が井上ボーリングオリジナル・アルミメッキスリーブ。
右が純正の鋳鉄スリーブである。

 

チューニングエンジンにも対応した
アルミメッキスリーブを画策中!?

編集部 ー「ICBM」によって、SRをはじめとした鋳鉄スリーブを持つエンジンの耐久性が飛躍的に向上することは分かりました。では、ほかにエンジンの善し悪しを決める要素にはどんなものがあるんでしょうか? 井上さんにとって良いエンジン、面白いエンジン、やりがいのあるエンジン製作というのを教えてください。

井上「極端なチューンナップをおこなうと、どうしても耐久性を犠牲にすることになります。だけど僕がさっき言ったように『次の世代に残すバイク作り』という考えた方からすると……もちろんお客さんがきちんと(デメリットを)分かっているなら、技術的に協力できるとことはやりますけども……正直、やっててもあんまり楽しくはない。ものすごいボアアップしてスリーブがペラッペラになっちゃったりね。
 お客さんのなかには限界を試したいというところがあるみたいで、そういうオーダーが来ると『よく考えた方がいいんじゃないですか?』って言いたくなっちゃうんですけどね(笑)。もちろんレーサーなどは別だから、一概にギリギリのチューニングがダメだとは言えない。だけど街乗りで使うバイクにそういうことをするのは、どう考えてもおかしいと思っています。
 で、質問の答えなんですけども、レースなんかの特殊な環境を除けば、耐久性がしっかりあって、キレイに無駄なくスムーズに回るエンジンかな、と僕は思いますね。やたら馬力を絞り出すだけのエンジンというのは、なんか『あとは野となれ』っていう考え方のような気がして、技術を発揮しても報われない……まあ、お客さんがそれで報われるのならいいんですけど(笑)。だけど、正直に言うと、やってて虚しいものがありますよね」

編集部 ー作るからには長く乗ってもらえるものを作りたい?

井上「ICBMなんかは、完全にそういう方向で作っていますね」

編集部 ーいままでのお話では、ICBMはあらゆるSRにオススメだということですね。しかし、それでもあえて「こんなSRに特にオススメ」ということはありますか?

井上「純正エンジンに変わるものとしてICBMを説明しましたが、じゃあチューンナップには向かないのかというと、決してそうではありません。今後は過激な改造をしているSRにも対応していきたいと、じつは考えています。
 SRのチューニングを得意とするショップさんと話をすると、SRは過激なチューニングをすると、構造上シリンダーがちぎれることがあるんだそうです。そこで、そういうショップさんでは強度を上げるために削り出しのシリンダーを使う。じゃあ、そういう削り出しシリンダーにウチのアルミスリーブを入れたらどうか、と。ウチの技術をそこで活かせれば面白んじゃないかと思っています。
 決して純正サイズだけではなくて、チューンナップの話も興味はあるし、やってみたいとは思っているんですよ」

編集部 ーチューニングエンジン向けのICBM!? それはSRタイムズとしても非常に興味深いです!

井上「と言いつつ、本当にやってみたいのは長く乗ったノーマルSRをオーバーホールするというもの(笑)。じつは雑誌の企画では、何万kmもの長距離を走った純正エンジンをただ普通にオーバーホールするというのはやったことがないんです。だから一度、普通の内燃機加工だけでもヘタッたエンジンが十分にシャキッとして気持ちイイというのをやって、紹介してもらいたいんです」

編集部 ーおぉ!! 僕の1993年式SR400は純正エンジンで、おそらく数万kmは走っているんです。排気量アップやチューニングをするつもりはないので、オーバーホールの際はぜひお願いしたいですね!

井上「いいですね。ぜひやりましょう!」

編集部 ーじゃあ、次の井上ボーリングさんの企画はぜひソレでいきましょう(笑)。今回はありがとうございました!

井上「ありがとうございました」

 
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株式会社井上ボーリング代表 井上壯太郎さん
同社代表で生粋の趣味人。インタビューにもあるように、ブルタコを5台所持し、ロードレースやモトクロス、トライアルなど、とにかく走る!! ほかにもマリンスポーツや、最近では二眼レフカメラにもハマっているとか!?
 

 
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