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2017年07月03日

ESSAY…井上ボーリング 井上壯太郎/「バイクをどう弄るのか」



 

バイクをカスタムするときに、
速さでないならなにをバイクに求めるのか。

「速いほうがエラい」なんていうのは20世紀的価値観であって、21世紀のいまもうそんなことに意味はない、ということは以前にもエッセイでご紹介したことがあります。それでもiB自身バイクをカスタムすることが大好きですし、とても価値のある素敵なことだと思っています。では、速さでなくて何を求めてカスタムし、エンジンを弄るのか、今回はそんなお話。

もし、速さがいまでも乗り物の唯一の価値だったら、なんで超音速旅客機のコンコルドはなくなってしまったのでしょうか。コンコルドが初めて羽田に来た時、高校生だった僕は望遠レンズをつけたカメラを持って、羽田まで自転車に乗って写真を撮りに行きましたよ。だって、人類の未来がそこにあるような気がしていたんです。英仏共同開発の「調和」という意味を持った怪鳥は金属を切り裂くような轟音とともに羽田に降り立ちました。排気の煙もいま思えば凄かった……。

ご存知のように、今はもうコンコルドは空を飛んでいません。人間はそうする技術力はあるのに、超音速旅客機を就航させるという選択を放棄してしまったんです。これは、現代において速さが意味を失っていることの象徴ではないでしょうか。

まして、地べたを走り回るバイクを速く走らせて、いったい何になるのでしょうか。

本格的なサーキットって一周2kmから5kmくらいでしょうか。隣町の駅まで行くくらいの距離。そこでロードレーサーは0.01秒の速さを競っています。競技として、あるいはゲームとしてのレースの意味や勝敗の楽しさを否定するつもりはありません。でも、隣町の駅まで0.01秒速く着いたとして、それがいったい何になるでしょう。そう、そんなことは実用的にはなんの価値もないこと。そして、20世紀と違って21世紀のいま、そんなことは人類の進化にとって、なんの意味もないことなんです。そんなことよりAIのアルファ碁が李セドル九段を破ったことのほうが、人類にとってはるかに一大事なんです。

なのに、なぜいまだにバイクを作る人や売る人、そして買う人たちまでもが「速さ」などということを後生大事にしているのか。それは「他にバイクを売る都合のいい口実を思いつくことができない」。ただそれだけの理由だと僕は思っています。

H2Rが400km/h出したなんてことを話題にするのは愚の骨頂ではないでしょうか。

大事なのは感じることができる性能。

だいいち0.01秒の速さの差を人間は感じとることができません。正確な計時システムに頼らなければ誰が勝ったかすらわかりません。高価なバイクを所有したとしても、感じ取ることができずメーターの数値や計時システムに寄らなければわからない性能差。そんなものにますます価値はないことがわかります。

では、人間は何を感じ取ることができるのか。

いま、意外にも2ストロークのバイクが復権を果たしつつあるようです。iBも2ストロークが得意な会社だと認識していただいているようで、たくさんの2ストロークエンジンの仕事をさせていただいています。2ストロークバイクの魅力は、あの2ストロークエンジン特有の胸のすくような加速感にあると思います。なぜ2ストロークの加速は人を魅了するのか。これを考えてみることが、絶対速度ではないエンジンの愉しさの真の価値を僕たちに教えてくれるのです。

僕は2ストロークバイクの魅力は、バイク自身が速く走ることを望んでいるようなイキイキとした、そのエンジンのフィーリングに原因があると思っています。

低い回転数からだんだんと回転が上がるにつれて力が盛り上がっていき、パワーバンドに入ったある回転数からは劇的に加速度を増していきます。このことは、みなさんご存知でしょう。これだけでも十分に魅力的です。

さらに、ここである一定のスロットル開度を保ったままにしておいたときのことを考えてみてほしいんです。スロットル開度が一定ということは、ライダーはある一定の速度を保とうとしているのだ、と考えることができます。ところが一定速度に達したあとも、スロットル開度が一定でも、2ストロークエンジンはだんだんに回転が上がると力が出て、バイクは加速していってしまいます。そうすると一定速度を保ちたいライダーはスロットルをやや閉じることになります。それでも場合によってはエンジンがもっと回ろうとしてしまう……、ここです!! このとき、ライダーは何を感じるでしょうか。

自分はバイクをなだめようとスロットルを閉じている。なのにバイクが勝手に力を出して速く走ろうとしている! つまり速く走りたがっているのは自分ではなくバイクだ! バイクが速く走りたがっている!! こういう印象をライダーは持つんです。

これが2ストロークバイクの魅力だと、僕は思います。つまり、スロットルの操作に対してエンジンが従順に”リニアに”反応するのではなく、ライダーの意思を超えて「バイク」が速く走ろうとしているのだ! と、このとき初めてライダーが思うのです。まるでバイクが「走りたい」という意思を持っているかのように!

それは走ることが好きなバイク乗りから見たら、こんなに可愛い乗り物は他にない、と思っても不思議はないと思います。そうですよね? 自分が乗って一緒に走ることをバイクが望んでいる! そして、それは絶対値としての速度の高低とはなにも関係がないんです。たとえ50ccのバイクでも2ストにはこういう性質があります。たとえ速度が30km/h以下であったとしても、このことを感じ取ることができてしまうんです。

それに比べると4ストロークエンジンはスロットル開度に敏感であって、リニアに反応することが美点だと考えられていると思います。サーキットでタイムを縮めるためなら、コーナリングの途中でパワーバンドに入ってしまって不用意に加速するような2ストロークよりも、4ストロークのような従順かつ大出力なエンジンの性質の方が乗りやすく、タイムも出るかもしれません。

でも、僕らはレーサーではないので、タイムを詰める必要もないし、絶対速度の値を高めることも求められていません。ただ、普通に公道を制限速度内で愉しく走れれば、それが一番いいんです。

今はたまたま2ストロークを例に出してエンジンの魅力についてお話をしましたが、2ストでも4ストでも、魅力的なエンジンを作ることを考えるときに、このようなライダーが感じ取れる楽しさの演出について考えないではいられません。

常日頃そんなことを考えているiBが今回、SR用に超軽量斧型クランクを開発することになりました。その味付けも当然上のように「エンジンからライダーが何を感じ取るのか」……このことを深く考えた設定になっています。

低回転でのトルクを極力失うことなく、しかも回すほどにエンジンがイキイキとしてくることが実感できるような絶妙の設定になっていると思います。

その成果をぜひお試しいただければと思います。
購入は下記Shop SR Timesから、ぜひよろしくお願い致します。

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ICBM®の技術はシリンダーに鋳鉄スリーブとは比較にならないほどの革命的な超長寿命を与えて、そのことで旧いエンジンに長く大事に乗り続けていただきたい・旧いバイクを大事にしていただきたい、ということなんです。iBが掲げている基本理念にしっかりと沿った新技術・新製品になっています。現在はあらゆるエンジンに対応できるようになりましたが、特にSR用には完成品キットも用意してご用命をお待ちしています。

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iBの得意技術ICBM®が登録商標になりました!
[I]noue boring [C]ylinder [B]ore finishing [M]ethodの略です。

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協力:(株)井上ボーリング

 


著者プロフィール
inouesotaro
(株)井上ボーリング
井上 壯太郎(いのうえ そうたろう)
創業63年、(株)井上ボーリング代表。エンジンのついた乗り物が大好き。仕事もエンジン、遊びもエンジン。トライアル・モトクロス・ロードレース。バイク以外ではボートを使って水上スキーやウェイクボード。現代世界はエンジンでできているのです!

 
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