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2016年10月21日

ESSAY/井上ボーリング 井上壯太郎/「大量生産ではなく単品・少量生産を目指す内燃機屋」


大量生産によって世界は経済的にまた物質的にとても豊かになりました。
でもそのために大変なものを失おうとしていることも事実ですよね。
それは地球環境です。

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キーワードは「量産効果」

工場をやっていると(言うまでもないことなんですが)、「一度にたくさん造ると製品一個あたりの単価は安くなる」というのは自明のことと考えられています。これが「量産効果」です。

一方、ジグを造れば加工がし易くなるが、そのジグ代を消却するにはある程度の個数を生産して売り切ることが必要です。加工ツールについても同じ。削りだしの品物を鋳物にする場合の鋳型代、量産に適したコンピュータ制御の機械や量産用の大きな設備の消却についても同様です。

こういう投資をすればするほど単価はどんどん安くなるんですが、その消却のためには同じものを大量に造って、残さず、売りさばいてしまわなくてはなりません。

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でもこれって、なんだかんだ言っても完全に造る側の理屈ですよね。ものを買う人の都合ではなくて、造る側の都合です。

つまり産業革命以降の社会というのは、民主主義の世の中といっても消費者である大衆は結局、製造者である大企業に都合のいいライフスタイルを知らないうちに選択させられてしまっていたのではないでしょうか。

それに対して、SRはカスタムされることが多いバイクですが、もともとは量産車であるSRをカスタムしていくというのは、この「量産効果」とはまさに正反対のことをやっていることになります。

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もちろん大量消費社会の功績はとてもすばらしいもので、良質な商品が世界に安く、あまねく行き渡るために必要なことだったわけで、一概にその効果を否定するなどということはできません。でも、日本のような国(先進国といっていいのでしょうか)においては、もうこれ以上の石油文明化(大量生産・大量消費化)はいらないのではないか、と思うのです。日本ではすでに、本当に必要なものはいくらでも、カンタンに、ラクチンに手に入る世の中になってしまっていますよね。

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工場を経営している僕がこんなことを書くのは、ある意味とても危険な(自分の存在意義を否定するような)ことのようにも思いますが、だけどできることなら、僕はそういうことを超克したような工場をやってみたいな、と今、夢見はじめていることに気づいたんです。

そして、量産できない「部品の修理再生」を担う内燃機屋であるiBは、その創業のときから思わず知らず、そのような活動を63年間にわたってやり続けてきたのだ、ということにも思い至ったのです。

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「世界に静かな革命を」

手作りの価値・働く喜びを大事にしたウィリアム・モリス的な(アーツ・アンド・クラフツ運動の理想を体現したような)ボーリング屋……わはは! そんなことができないもんでしょうかね。

だって、ウチは量産もいまだに少しはやってるけれど、お客様のために一つ一つのエンジン部品を丁寧に仕上げることを一番に考えようとしているわけですからね。

そうして、単品加工や少量加工の価値を世の中に認めていただくことによって、大量生産・大量消費・大量廃棄一辺倒の世の中を少しだけ変えて、世界をスローダウンさせるお役に立ちたい。もちろん、iB一社でできることは限られていますけれども、その精神を示すことくらいはできるのではないかと考えているんです。世界に静かな「革命」を起こすことができないものか。

写真のKKURUMIさんやオオサワくんはiB工場のロフトでそんな「革命」を考えている、というわけです。

↓↓今回撮影した内容の動画版はコチラから↓↓
https://vimeo.com/162615021

 
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ICBM®の技術も、シリンダーに鋳鉄スリーブとは比較にならないほどの「革命的な」超長寿命を与えて、そのことで旧いエンジンに長く大事に乗り続けていただきたい・旧いバイクを大事にしていただきたい、という点でまさに上に書いたような、iBが目指している理念にしっかりと沿った新技術・新製品になっています。現在はあらゆるエンジンに対応できるようになりましたが、特にSR用には完成品キットも用意して、ご用命をお待ちしています。

SR-ICBM®のシリンダーはShop SR Timesでもお買い上げいただけますので、ぜひご検討いただければと思います。

 
iBの得意技術ICBM®が登録商標になりました!
[I]noue boring [C]ylinder [B]ore finishing [M]ethodの略です。

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協力:(株)井上ボーリング

 


著者プロフィール
inouesotaro
(株)井上ボーリング
井上 壯太郎(いのうえ そうたろう)
創業63年、(株)井上ボーリング代表。エンジンのついた乗り物が大好き。仕事もエンジン、遊びもエンジン。トライアル・モトクロス・ロードレース。バイク以外ではボートを使って水上スキーやウェイクボード。現代世界はエンジンでできているのです!

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